2007年4月3日火曜日

「すべての謎は俺が解く。」と、ヘビは言った。

~サン=テグジュペリ 「小さな王子」より~

2007年3月11日日曜日

月光荘事件 Ⅰ

「月光荘事件」と呼ばれる、少し奇妙な出来事があるのをご存知だろうか。
昔、東京・銀座の或る画廊で起きた、殺人事件だ。
しかし、僕自身はこの事件を「殺人事件」と呼んでいいものか、戸惑いを感じている。
確かに外見的には、人が一人殺され、警察が殺人事件として捜査し、解決し、報道されて、そして時の経過とともに忘れられていった、他の多くの「殺人事件」と同じなのだが、内側からこの事件を眺めてみると、あまりにも不可解な部分が多すぎるのだ。

なぜ、僕が「内側から見る」などということができるのか。
話は数年前にさかのぼる。
関係者が多いため曖昧にせざるを得ない部分があるが、とにかく今から10年ほど前、僕はある会社の経理部に勤めていた。

経理部といえば、想像通りの地味な部署であり、お世辞にもドラマティックな仕事が日々舞い込んでくるとはいえない、どちらかといえば他部署が作る厄介ごとの後片付けが仕事の大半を占める、「企業組織的皿洗い」といった風情の部署である。
「どんな髭剃りにも哲学はある」のかも知れないが、髭は自分の髭であり、皿は他人の皿である。考えることはもっぱらそれが何枚で、いつまでに洗い終えなければならないのか、だけである。
昼過ぎに
課長に呼ばれたその日も、言われたことを淡々とこなし、早く引けてやろうぐらいに思っていた。

課長が僕に命じたのは、うちの会社が1年前に買収した銀座の或る画廊の会計帳簿調査と、購入価額の算定根拠の整理だった。
近く国税局の調査が入るため、おかしな書類が出てこないよう、「こぎれいに」しておく必要があるのだろう。
この手の仕事は、かなりめんどくさい部類に入る。
企業買収などというと聞こえはいいが、相手は税金対策上、法人成りをしているだけの個人事業者である。当然帳簿も、資産台帳も雑然としており、どれが会社のもので、どれが個人のものかもわからないような有様である。1年前の買収時、僕は現場に立ち会っていた。とにかく、その画廊事務所のすべての書類を箱につめ、トラックごと大阪の本社に戻り、そのまま僕の会社の倉庫に、文字通り投げ込んで、後はそのままになっている。本当に必要だったのは税務申告書と土地権利書だけだった。

楽器


弾ける楽器があるのは、とてもいいことだと思う。
ギターという楽器は、一番習得しやすい楽器じゃないかな、という気がする。
そして弾く人の性格や、そのときの気分が最もよく出る楽器である。
脳の一部が、指に伝わり、音に伝わる。
なにを考えているのか、一目瞭然である。
好きだったギタリストを書き出そうとしてみたが、意外に少ない。
高中正義:この人のはよく聞いた。フレーズが歌のようにキャッチーで、すばらしい。

2007年2月22日木曜日

深夜タクシーに乗る

大阪のオフィスから、奈良の自宅まで、タクシーで帰った。

深夜残業でタクシーを使うのは久しぶりだった。

11時を過ぎるころには、オフィスビルの周りには、深夜帰宅のサラリーマン
を狙うタクシーが、路肩に点々と停車しているのだ。

文字通り長距離客を「狙う」のだが、彼らは実際にはに狙うことはできない。
選ぶのはこちらのほうだ。 獲物が自ら捕獲者に進み出る珍しいパターンである。

僕は深夜の長距離タクシーが好きである。
人見知りするので、運転手と、長々雑談をするのは苦手だが、
真夜中の高速を車窓から眺めたり、外を流れる街灯の黄色い灯りの列が車のなかに何度もすべりこんでくるのをぼぉっと見ていたりするのが好きである。

ラジオもいい。
まじめそうなパーソナリティが、書評をやったり、最近の流行に意見を述べたりしている。
時々、まず思い起こさないようなことについて話してたりする。
各国の起床時刻の違いとか、全国の公民館の使われ方とか。
この間は「自分にあった補聴器の選び方」だった。

こういうのを本気で聞き込んでみると、意外に楽しい。

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家について、その話の続きを聴こうと部屋のラジオをつけてみると、
不思議と一向に面白くないんですね、これが。

やはりああいうのは深夜のタクシー向きのようだ。

2007年2月11日日曜日

マービンゲイ

久しぶりにマービンゲイを聴いた。
「スタボーンカインドオブフェロー」という、古い曲をnapsterで落として聴いてみた。

この人のシャウトは上品だ。

時々、というか頻繁に声が上ずるんだが、それも上品。
なんだか、
「不本意ながら、気持ちが高ぶりまして、その結果このような上ずりに」
といった感じ。

学生時代はマービンが大好きで、「what's goin' on」のCDを何度も、擦り切れるまで、
といいたいがCDは擦り切れないので、まぁ、たくさん聴いて、
彼がどこでどんなシャウトをするかまですべて記憶していて、完コピ状態で
「ホゥッ」とか、
「アー」とか、

しまいには間奏のサックスソロまで覚えていた。

ファンならこれくらい当たり前のことである。

Let's Get It On の出だしのワウワウ・ギターが弾きたいために、CryBabyを購入。

ファンならこれくらいは。

2007年2月10日土曜日

gecko cries

geckoとはヤモリのこと。
鳴き声からこの名がついている。
東南アジアにすむ「トッケイ」も、やっぱり鳴き声が名前。
鳴く爬虫類は珍しいらしい。そう言われるとたしかに。

うちにはよくヤモリがくる。
外でなく、中に。いったいいつ入るのか。
会うと本当に驚く。
正直、やめてほしい。

ハエや蚊などは、窓があいたときに入ったんだろ、くらいなもんで、
いてもまぁ、しょうがないなと思う。
ゴキブリ(うちではまだ出ないけど)や、クモ(これは出る)は、入ったというより
「すんでらっしゃるんですね」という感覚なので、これもまぁ。

しかしである。
ヤモリは間違いなく外に住んでいる。はずである。
また、そうそうヤモリが入ってくるような瞬間もなさそうなはずである。

なのに、「入っていいですか」というわけでもなく、突如
「ちょこーん」といるのだ。家の中に。
我が家の壁を、あの特殊な分子間力を駆使した指で壁歩きをしているのだ。
もう十数回、遭遇しているが、そのたびに心臓が飛び出るほど驚く。そりゃもう驚く。

外で貼り付け、と。
外を守れ、と。

捕まえるのだって一苦労である。
なにせ家守(やもり)様なので殺すわけにも行かない。
時には網。時にはビニール。

でもなぜか、何度も出会ううちに妙な興味が湧きつつあることに気づく。
不思議な生きものだ。